若い地球と進化論

地球の歴史や人間の起源について考えるブログ

地球の誕生日

f:id:darwinkieta:20190817000042p:plain


地球は一体いつ生まれたのでしょうか?

 

【はじめに】

一般的な考え方では、地球の年齢は約46億年とされています。その根拠となっているのは、アメリカの地球化学者である、クレア・パターソン(Wikipedia)による「隕石の年代測定に関する研究」です。彼が測定したのは、こんな隕石でした。

f:id:darwinkieta:20190816233614j:plain

キャニオン・ディアブロ隕石(Wikipedia

パターソンは、シカゴ大学の学生時代に、鉛による健康被害を研究しました。その後、鉛の放射性同位体の比を用いた年代測定法によって、隕石の年代を推定し、地球の年齢としたのです。パターソンの測定結果については、地球と隕石の起源は同じ、としてよいのか等、さまざまな意見があります。興味のある人は、地球の年齢(Wikipedia)などの、リンクを参照してください。

 

パターソンが使った「鉛の放射性同位体」による年代測定法や、地球の年齢を推定するその他の方法については、原理が複雑なので説明はいたしません。

今回は全ての年代測定法に共通する問題点についてお話ししたいと思います。

 

【放射性年代測定法の原理】 

この「問題点」を説明するため「炭素年代測定法(炭素法)」と「カリウム-アルゴン法(アルゴン法)」を例に進めていきます。これらの年代測定法の詳細については、以下の記事も是非ご覧ください。

 

炭素法: 「昔」は測れるの?:炭素年代測定のナゾ - 若い地球と進化論

アルゴン法: もっと「昔」は測れるの?:続・年代測定のナゾ - 若い地球と進化論

 

「問題点」に入る前に、放射性年代測定法の原理と仮定についてお話しします。なんだか難しそうですが、わかりやすく言いかえるなら、

 

”y=ax+b”という式があったとして、そのものが原理に、abなどの定数仮定に相当します。そして、x測定結果を代入すれば、yとして年代が求められる、というわけです(実際の計算はこんなに簡単ではありませんが)。

 

放射性年代測定の原理について説明します。

第一に「昔」も「今」も、次のような反応が続いていることが大前提です。 

 

「昔」放射能をもつ物質A0(不安定)⇒放射能をもたない物質B0(安定)+放射線

「今」放射能をもつ物質A(不安定)⇒放射能をもたない物質B(安定)+放射線

 

上の式は、「放射能をもつAという不安定な物質」が「放射線を放出」して「放射能をもたない安定した物質B」に変化することを示しています。

物質AやBの横の数字は「時間」、すなわち「0=その物質が造られた時」「1=年代測定する時(現在)」を示しています。

 

第二に、昔と今を比較します。比較の対象は2つあります。

  

① A0とAの差(例:A=炭素法における「C14」)

② B0とBの差(例:B=アルゴン法における「アルゴン」)

 

このとき、A1やB=実際の測定結果、となりますが、A0やB0については、昔の事実なので測定することはできません。そこで、もっともらしい仮説によって、A0とB0を決めておく(=仮定)必要があります。

 

また、放射性物質が半分の量に減る時間は「半減期」として知られているので「半減期何回繰り返せば上記①や②の差が生じるのか」は計算で求めることができます。

そして、この結果をもって「”0”で示される時がいつなのか」、つまり、その放射性物質が誕生した年とするのです。

 

【年代測定法の仮定と問題点】 

 放射性年代測定法の仮定についてお話しします。年代測定法は、使用する放射性物質半減期が違ったとしても、共通する「3つの仮定」があります。そして、この仮定こそが問題なのです。

では、放射年代測定法の仮定と問題点についてお話しします。

 

1)初期値(ゼロ)がわかっている

初期値というのは、ある物質が造られた時、すなわち「0(ゼロ)=知りたい昔」時点で、その物質に含まれる、A0やB0の量のことです。これは、測定法ごとに決められていて、これを「初期値の設定」といいます。

例えば、炭素法では、空気中の全炭素(C12+C13+C14)に占めるC14の割合は、昔も今も変わらず一定の値であったと仮定されています。また、それだけでなく、植物も動物も生きてさえいれば、必ず空気を取り込むので、生体組織中のC14濃度は、空気中のC14濃度と等しいとも仮定されています。

また、アルゴン法では、溶岩が固まる時に、岩石中の全てのアルゴン(ガス=気体として存在)は、高熱によって消失したはずなので、B0=ゼロと仮定されています。これらの初期値が決まると、後々の計算が非常に単純化され、都合が良いのです。

 

けれども、物事はそう単純ではありません。C14は宇宙線によって生成されるのですが、宇宙線は地球の磁場の影響を受けています。例えば、磁場が強いと宇宙線が妨げられ、生成されるC14が減ります。また、火山活動が活発な時は、CO2が増え、C12が増えます。このように過去の磁場変動や火山活動によって、過去のC14濃度は、現在よりも低かったことが推測されるので、炭素法による測定結果は、年代を過大評価(実際よりも古いものだと)してしまう可能性があるのです。

炭素法同様、アルゴン法の初期値(B0=ゼロ)にも問題があります。溶岩が固まる時にアルゴンガスが消失しきれなかった可能性があるからです。噴火時に溶岩に残存したアルゴンガスは「過剰アルゴン」と呼ばれ、あり得ない程、古い年代を示すことが知られています(参考: 過剰アルゴン(輸送と捕獲過程))。例えば、噴火年度の知られている火山の岩石を、アルゴン法で測定したところ、実際の噴火年度よりもはるかに古い年代を示したという研究結果が発表されています。

 

火山と溶岩 場所 噴火年度

アルゴン法による測定結果

Hualalai玄武岩 ハワイ AD1800年頃 160~2100万年前
Kilauea玄武岩 ハワイ 200~1000年以内 800~4290万年前
Mt.Etna玄武岩 シチリア AD1792年 35万年前
Sunset噴火口玄武岩 アリゾナ AD1064年 27万年前
Mt.Lassen斜長石

カリフォルニア

AD1915年 11万年前

 

 2)半減期は一定である

環境や条件によって半減期が変化する可能性について、専門家の間でも意見が分かれています。しかし数千年、数億年という長い時間経過の中で、半減期が、計算通り一定だったと一体だれが保証できるのでしょうか?

 

3)閉鎖系が保証されている

閉鎖系とは測定に関わる物質について「外部からの出入りがない」とされる環境のことです。しかし、自然界において閉鎖系を証明することは非常に困難です。

例えば、年代を知りたい縄文式土器があるとします。この時、土器そのものを炭素法で年代測定するわけではありません。土器と一緒に発掘された貝塚や発見された地層中の炭化した木材の年代を測定します(参考:縄文土器の始めと終わり)。しかし、自然界に存在する貝や木材は、外気だけでなく、地下水や雨水、他の生物と接触したことでしょう。これはもはや「閉鎖系」ということはできません

閉鎖系について、文部科学省のサイト文化資源の発掘(1)C14年代測定の原理から、一部を要約して引用します。

C14による炭素年代測定法の原理に基づき、ある試料について正確な年代値tが得られる条件としては、半減期T1/2が正確に求められていること以外に、次の2項目があげられる。

ア 試料の炭素固定が行われた際の初期14C濃度が正確に解っていること
イ 試料が外界から隔離されてから、年代測定に至るまでの間、試料中の炭素は外界との交換がなく閉鎖系に保たれていたこと、

これらの2条件は、測定対象となる試料自身の性質に依存するが、試料が古くなるほど、初期14C濃度は不明確になるし、自然環境下に存在した際に炭素について閉鎖系が満たされていたかは明らかではない

  

上記で述べられているように、自然環境でみつかる試料中の炭素については、閉鎖系の条件は満たされていない可能性が高いのです。ですから、これらの仮定が成り立つ限りにおいて、放射性年代測定結果は意味を持つのですが、これらの仮定が保証されている可能性は、実は限りなく低いのです

 

これらの仮定(要件)を満たすことの困難さについては、「放射年代測定における基本的な問題」という論文を、是非お読みください。重要と思われる部分を要約して、下記引用します。

測定に用いられた試料は、各年代測定法で要請されている要件をきちんと満たしているのか。この点について、十分に客観的な見地から判断できるような基準を設けることが重要である。

しかし、実際には、このことが最も困難な点であり、しろ得られた結果から判断することも少なくない

 

引用部分を簡単に言えば「仮定が正しいかどうか、わからなくても、測定結果が合ってれば、それで良しとしましょうよ」ということです。

 

それでは「測定結果」「何」と合っていればよいのでしょうか?実は、この「何」こそが年代測定の「最も」重要なポイントです。年代推定結果よりも重要かもしれません。なぜなら、この「何」が決まれば、全てが決まるからです。

そして「現代科学の合意」によれば「何」に相当するのが「地球はかなり古い」という信念なのです。測定結果が、この信念に合っていれば、受け入れられるし、合っていなければ、間違いとされるのです

このような「現代科学の合意」のことをパラダイムといいます。

 

【まとめ】

科学には「実験科学」「歴史科学」があります。

実験科学については、実験結果をもとに議論を戦わせ、その結果によって、どちらが正しいかを客観的に判定することができます

しかし、歴史科学においては、議論を戦わせても、実験できないので判定できません。そこで「どちらの主張が正しいのか」の判定は「パラダイム」に沿って行われるのです。

 

以上から、地球の年齢は、現代のパラダイムによれば46億年となります。けれども、放射性年代測定は、さまざまな不確かな仮定の上に成り立っているので、その年齢が本当に正しいかどうかは、今のところわかりません、というのが良識のある答えだと思います。

 

今回の記事をまとめた動画を紹介します。 

 

7月はお休みしてしまったので、長くなってしまいました。少し難しかったでしょうか?もしよろしければ、感想・コメントを是非残していってください。