若い地球と進化論

地球の歴史や人間の起源について考えるブログ

鳥は恐竜から進化したのでしょうか?(2)鳥と恐竜の違い

GWですが・・・新型コロナウィルスの影響で大変な思いをされている方も多いのではないでしょうか。普段何気なく過ごしている日常が、どれほど尊いものかを身に染みて感じています。 

 

さて、前回は羽毛恐竜とその歴史について書きました。恐竜、特に獣脚類の化石に、羽根の前進化段階(プロトタイプ)を示唆する痕跡が見つかり、鳥は恐竜から進化したという説がクローズアップされているというお話しでした。

実は鳥と恐竜の間には、羽根以外にも違いが沢山あります。鳥は恐竜から進化したとするなら、その過程で、羽根以外にどのような違いを乗り越えなけらばならないのでしょうか。今回は、鳥と恐竜の生物学的な違いについて詳しくみていきたいと思います。

 

1)恐竜は恒温動物?変温動物?

恒温動物は、環境温度によらず体温を一定に保つことができますが、変温動物は環境の影響を受けます。鳥類は恒温動物で、体温は哺乳類よりもやや高く41~43℃位です。現存する爬虫類は全て変温動物ですが、恐竜は恒温動物だったという説もないわけではありません。しかし、恐竜には、恒温動物にもみられる特徴、すなわち鼻腔にある鼻甲介という空気をあたためる構造が欠如しており、変温動物であった可能性が高いと考えられます。

 

2)骨に空洞があるのは鳥だけではない

中空の骨は鳥の特徴ですが、哺乳類の頭骨にも副鼻腔という中空構造があります。副鼻腔は、強度を保ちつつ重量を減らし、声の響きにも影響しています。また、ブラキオサウルスなど、首の長い草食恐竜の頸骨にも空洞が発見されており、そのことで容易に首を動かすことができたのだろうと考えられます。もちろん、鳥にとっては、体重を軽くすること、呼吸のしくみに関わることから、中空構造はより重要です。

 

3)鳥に近いのは鳥盤類?それとも竜盤類?

鳥を含む脊椎動物の骨盤は、仙骨、その両側にある腸骨、座骨、恥骨によって形成されます。爬虫類と鳥類の骨盤は異なっていますが、恐竜は、爬虫類型骨盤の「竜盤類」と、鳥型骨盤の「鳥盤類」に分けられます。鳥盤類の恐竜は、ステゴサウルス、トリケラトプス、アンキロサウルスなど4つ脚で背びれや角を持ちユニークな容姿が特徴です。けれども、鳥に進化したと考えられているのは、骨盤が似ている鳥盤類ではなく、ティラノサウルスなどに代表される竜盤類なのです。

 

図1 竜盤類(アロサウルス)と鳥盤類(ステゴサウルス)の骨盤の比較

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Saurischian:竜盤類、Ornithischian:鳥盤類

出典:Encyclopaedia Britannica; https://www.britannica.com/animal/dinosaur/Classification

 

4)鳥の呼吸系は、鳥だけの特徴

鳥は他の脊椎動物と全く異なるしくみで呼吸をしています。高い体温を保ち、飛びながら呼吸するのに非常に良いのです。鳥以外の脊椎動物の肺胞は風船のように膨らみ、吸気と呼気で空気の流れが変わりますが、鳥の肺は膨らまず、代わりに気嚢という袋が膨らみ、吸う時も吐くときも空気が傍気管支内を一方向に流れるしくみになっています。このため、吸気時も呼気時も、酸素を体内に取り込むことができるのです。また、鳥以外の肺は、横隔膜の動きによって収縮しますが、鳥に横隔膜はなく、気嚢は胸骨の動きによって収縮します。鳥は羽ばたくときに胸骨を動かすので、酸素を必要とする動作が呼吸動作につながり、非常に効率が良いのです。

 

図2 鳥類の肺の構造 

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T:気管、L:肺、AS:気嚢、HB:中空の骨構造

出典:Creation.com; Dinosaur to bird theory a flight of fancy - creation.com

 

5)恐竜の呼吸のしくみ

恐竜は爬虫類によく似ています。爬虫類は肺胞の数や肺の表面積が少ないため、哺乳類に比べ、効率ではやや劣っています。肺や横隔膜などの組織は化石化しにくいため、恐竜の肺の構造を知る機会は滅多にありません。けれども、鳥へ進化上の祖先と言われている、獣脚類(竜盤類)の化石に、隔壁をもつ、ふいご状の構造がみつかりました。これは、現在のワニにみられるように、横隔筋によって肝臓を動かし「ふいご」のような呼吸を行っていたことを示唆しています。

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6)鳥と恐竜の支点の違い

鳥の脚は中ほどで膝とは逆、つまり後ろに曲がっているように見えます。実はこれは膝ではなく、踵(かかと)に相当します。体外に見えているのは膝から下で、膝から大腿に相当する骨は体内に密着し外からは見ることができません。鳥は膝を支点に膝下を使って歩行し、恐竜は骨盤を支点に大腿以下を使って歩行します恐竜は太く長く筋肉質な尾を持っており、骨盤(支点)より前にある上半身と重さのバランスをとるのに都合がよいのです。鳥の尾は相対的に軽くできており、もし鳥の支点が骨盤にあったなら、バランスを崩して前のめり、地面をくちばしでつつくことになるでしょう。

 

図3 鳥類の骨格模型(△:支点となる膝)

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Pygostyle:尾骨、Synsacrum:腰仙椎、Femur:大腿骨、Keel:竜骨、Ankle:踵

出典:Answers in GenesisDid Dinosaurs Evolve into Birds? | Answers in Genesis

 

7)鳥と恐竜の尾、どこが違うのか?

絶滅した始祖鳥には、長い骨性の尾が備わっており、そのため、恐竜(獣脚類)に分類されたこともあります。鳥も獣脚類も尾は骨性ですが、構造は随分と違っています。獣脚類の尾はワニのように、椎骨の背側には神経棘(突起)が、腹側には血管棘(突起)があり、側方には靭帯や筋肉が付着していた痕跡があります。長く太い尾でバランスを保つ恐竜には筋肉や血管は必須であったことでしょう。一方、化石で発見される鳥の尾は、もっと簡単な構造です。神経棘や血管棘もなく、筋肉があったとしても、根元にごくわずか、尾を指揮棒のように動かす程度だったと考えられます。

 

8)恐竜が羽根を獲得したわけは?

鳥は恐竜から進化したと信じている人たちは、恐竜には羽根が生えていたと主張しています。その理由として、温血動物になるため、目立つため、飛行能力を獲得するためなどの仮説があります。けれども、単に体温を上げるなら脂肪を増やす方が簡単ですし、ヘビにも奇抜で複雑な色彩を持つものがいます。また、プテロダクティルスなどの翼竜は、コウモリのような被膜を持ち、飛翔能力を備えていましたと言われています。恐竜にとって羽根の必然性はどこにあったのでしょうか。

 

図4 プテロダクティルスの化石標本

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https://en.wikipedia.org/wiki/Pterodactylus

 

9)とても複雑な羽根の構造

鳥類の羽根は、爬虫類のうろこと異なり哺乳類の毛に似ていますが、もっと複雑です。例えば羽根は、羽軸(Rachis)を中心に内弁と外弁に分けられ、内弁と外弁は、羽軸からわかれた羽枝Barb)とそこから分岐した小羽枝(Barbules)によって構成されています。小羽枝(隣の羽枝から分岐した)小羽枝と重なり合い、上の小羽枝のフックと下の小羽枝の突起が、まるでジッパーのように組み合っています(○barbicells:鉤)。また、尾の根元の尾脂腺からは、油性の物質が分泌され、それを嘴でまんべんなく体全体に塗ることで(いわゆる羽づくろい)、水をはじき、雨の中を飛び、水中を自由に潜ることができると考えられています。

 

図5 翼と尾の羽根の比較と羽毛の構造

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rachis:羽軸、barb:羽枝、distal barbules:遠位小羽枝、proximal barbules:近位小羽枝、barbicels:鉤(赤い〇で示されたフック構造)

出典:A Guid to Bird Feathers;  https://www.avianreport.com/bird-feathers/

 

これまでみてきたように、鳥と恐竜には、羽根以外にも多くの違いがあります。もし鳥が恐竜から進化してきたのが本当だとすれば、それらの違いの移行形態を示す(自然選択されたもの、されなかったもの含め)多くの化石が見つかるはずです。しかし、現時点では、羽毛恐竜以外に移行形態は発見されておらず、その羽毛恐竜でさえ化石工場で作られたものがあると指摘されています(▶:鳥は恐竜から進化したのでしょうか?(1)歴史と背景 )。

また、羽毛恐竜には羽毛の痕跡を持つもの現代の鳥と同じ羽根を持つものがありますが、現代の鳥と同じ羽根を持つものについては、学者の間で鳥か恐竜かで分類が一致していません。真の羽根をもつこれらの化石を、鳥類学者は鳥に分類する傾向があり、古生物学者は恐竜に分類する傾向があるのです。この違いを生む大きな理由は、鳥類学者は、恐竜と鳥類は共通祖先から別々に進化したと考えており、古生物学者は、恐竜から鳥へ進化したと考えているからです世界観の違いが、考え方の違いを生むのです