若い地球と進化論

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ヒトとチンパンジー(2)Fusion is Illusion?

1.はじめに

前回に続き、ヒトとチンパンジーについての話題です。進化論では「ヒトとチンパンジーが共通祖先から分かれた」とされており「染色体の融合(詳細は後述)」、つまり、ヒトの2番染色体がチンパンジーの12番、13番染色体を足したものに似ていることがその証拠として挙げられています。一方、融合したとするなら、説明のつかない事実(テロメア問題、セントロメア問題)も観察されており、この問題には、まだ決着がついていません。今回は、染色体の融合説について解説します。

 

2.染色体の融合説 

染色体は細胞の中にあって、遺伝情報を伝達する構造体です。ヒトには23対46本の染色体があり(22対の常染色体と1対の性染色体を含む)、1対の染色体は長いものから順に番号がついています(図1参照)。

 

図1.ヒトの染色体 

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出典:Wikipedia: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Human_male_karyotype.gif

 

他方、チンパンジーには24対48本の染色体があり、ヒトより1対余計にあるのですが、進化論の考え方では、遺伝子配列のパターンが似ていることからチンパンジーの12番、13番染色体が融合し、ヒトの2番染色体ができた」とされているのです。 

進化論を信じている科学者は、ヒトとチンパンジーは共通祖先から進化したと堅く信じているので、チンパンジー12番染色体を2A染色体、13番染色体を2B染色体と呼び、染色体の融合説を疑うことなく、そのまま受け入れています。

けれども「ヒトの2番染色体は、チンパンジーの染色体が融合してできたとは考えられない」という証拠も挙げられています。今回は、それらの証拠のうち、いくつかを紹介したいと思います。

  

3.融合説の問題点

 

3-1 テロメア問題

テロメアとは、染色体の両端にある繰り返しのあるDNA配列です。遺伝情報を持っていませんが、紐がばらばらになるのを防ぐ「ヒモ止め」のような存在として、染色体の物理的、遺伝的な安定性を保つ働きをしています。

 

図2.ヒモ止め 

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もしチンパンジーの染色体が融合したのが本当だとすれば(図3参照)、ヒトの2番染色体の融合したとされる部位には、で示されるように、テロメアの痕跡があるはずですが、 実際はかなり異なっています。

例えば、テロメア塩基配列の反復は、数千塩基に渡るものですが、ヒトの2番染色体の融合したとされる部位には、わずか数百塩基しか存在していません。また、テロメア塩基配列は機能を持っていないはずですが、融合したとされる部位は、遺伝情報を含んでいることがわかりました。

つまり、ヒトの2番染色体は、チンパンジーの12番と13番染色体を足した塩基配列のパターンに似ていたとしても、テロメアが融合した部位に相当する塩基配列は、テロメアにはない特徴を備えているのです。

 

図3.染色体融合のイメージ(赤:テロメア、青:セントロメア)

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出典: https://answersingenesis.org/genetics/dna-similarities/chromosome-tales-and-importance-biblical-worldview/

  

3-2 セントロメア問題

セントロメアは、染色体の長腕と短腕が交差する部位、染色体のほぼ中央に位置しています。テロメアのように反復する塩基配列が存在しており、もし融合したとすれば、ヒトの2番染色体には、図3で示されるように、セントロメア1箇所と、セントロメアの名残をとどめたもう1箇所が存在するはずです。

ところが、元のチンパンジーの染色体からの名残をとどめているとされる配列を調べてみると、セントロメアとされる反復配列は、元の長さのおよそ1/10程度しかなく、また、この配列はセントロメア特有ではなく、全てのヒトの染色体で観察されることがわかりました。さらに、セントロメアとされる塩基配列は、タンパク質をコードする、ANKRD30BLという遺伝子の中に観察されますが、セントロメアは遺伝子の中に含まれることはありません

つまり、ヒト2番染色体の中のチンパンジーセントロメア由来とされる塩基配列は、反復長さ、特異性、機能の点で、およそセントロメアとは異なる特徴を備えていることがわかったのです。

以上のように、テロメアセントロメアの観察事実から言えることは、ヒトの2番染色体は、チンパンジーの2本の染色体が融合してできたのではない可能性が高い、ということです。

  

4.「融合」は進化なのか?

「融合」は進化論にとって、馴染み深く受け入れやすい概念です。例えば、スマートフォンは電話にパソコンの機能が融合したもので、それぞれ単体よりも、はるかに使い勝手が良く、電話が進化したという言い方ができるかもしれません。

けれども、スマートフォンと今回の染色体の融合は次元が異なります。なぜなら、スマートフォンは、電話にパソコンという新しい機能が加わっていますが、チンパンジーの染色体の融合においては、新しい情報は何ら加わっていないからです。

 

5.まとめ

これまで述べたように、ヒトの2番染色体には、チンパンジーの染色体が融合してできたとする説では、科学的に説明できない観察事実、つまりテロメア問題、セントロメア問題が存在します。

染色体の研究は、再現と検証が可能なので実験科学の領域です。融合説は同じ染色体を扱っているので実験科学の延長のようにみえますが、再現も検証もできないので、歴史科学の領域なのです。融合は幻想?と冒頭で紹介した通り、これらは全て、進化論を信じる人たちが造った想像の物語なのです。