若い地球と進化論

地球の歴史や人間の起源について考えるブログ

ネアンデルタール人に関する最新の知見

※過去ログ「ネアンデルタール人再考」に加筆しました※

 

最近、メディアでネアンデルタール人に関する記事や番組をよくみかけますね。

Nature(著名な科学雑誌)、CNNやNewsweekでもさかんに取り上げられています。今回は、ネアンデルタール人に関する、最新の記事を紹介します。

 

ネアンデルタール人が注目を浴びるようになってきたのは、ここ10年のできごとですが、こんなに話題になるのはナゼでしょうか?

 それは、発掘される個体数が増え、遺伝子解析の方法が発達して、これまでベールに包まれていたことが、詳しくわかるようになってきたからです。その結果、彼らは思った以上に、現生人類に近い、ことがわかってきました。

 

そのため、かつては毛むくじゃらで、ゴリラと人間を合わせたような容貌で描かれていましたが、最近では、髪の毛こそくしゃくしゃですが、色白でそばかす、お風呂に入って、整髪すれば、現代人と変わらないような顔立ちで描かれています。

 

10年前のナショナルジオグラフィック誌にも復元像や特集が組まれていました。ご興味のある方は、こちらもご覧ください。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

現代人とは、全てが似ているわけではありません。ネアンデルタール人と現代人との違い、も明らかになってきました。

 

例えば、解剖学的には、現代人と比べ、胸郭が(末広がりの)釣鐘型で、頭蓋骨をみると、脳容積は大きいが、眉弓が突出して、頭頂部が平坦だと言われています。

 

(参考)ネアンデルタール人の骨格(左)と現代人との頭骨の比較(右)  

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(全身骨格)https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Neanderthalensis.jpg (頭骨比較)https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sapiens_neanderthal_comparison.jpg

遺伝学的には、ネアンデルタール人の骨から抽出されたミトコンドリアを解析したところ、現生人類とネアンデルタールの分岐した時期は、現生人類がアフリカを出たとされている、6万年よりもはるか前であった、とする報告があります。

 

年代の特定については、発掘された骨から抽出されるDNAが、環境の変化や汚染の影響を完全に取り除いた状態で、正確に解読できたのかという疑問も残されていますが、DNAが解析できたこと自体は、素晴らしいことですね。

 

一方、現代人とネアンデルタール人の遺伝子の違いは、2頭のチンパンジーの遺伝子の違いよりも小さい、という報告もあります。つまり、チンパンジーという種内の遺伝子のバリエーションの方が、ネアンデルタール人と現代人の遺伝子の違いよりも大きいということです。

 

  

それでは、生活習慣や遺伝子に関する2つの記事を紹介します。

 

  

1.ネアンデルタール人の生活は、それほど過酷ではなかった

これまでの、進化論の考えによれば、ネアンデルタールは、脳容積は大きいものの、頑丈な体躯などから、現代人より劣っていて、粗野で野蛮な生活、肉弾戦に近い狩猟スタイルであったと考えられていました。しかし、発掘される頭蓋骨の損傷具合を研究した結果、比較的穏やかに暮らしていたと結論づけられたようです。
www.natureasia.com

 つづいて、こちら、

 

2.ネアンデルタール人と初期人類との交雑が評価された

ネアンデルタールの人骨から抽出されるDNAを解析した結果、ヨーロッパ系、東アジア系現代人の遺伝子のうち、約2%がネアンデルタールに由来する遺伝子が見つかったそうです。また、ヨーロッパ系よりも東アジア系で、その割合が高いことから、遺伝子の交配は、すくなくとも複数回あったことがわかったそうです。 

www.natureasia.com

 

これら2つの記事をまとめると、

 

ネアンデルタールと現生人類は、同じ時代に、同じ地域に住んでいた。その生活習慣は、粗野で野蛮なものでなく、現生人類とよく似ていて、互いに交配していた。

ということになります。

 交配していたとは、平たく言うと、結婚していたということ。家族は、社会を構成する最小単位ですから、ネアンデルタール人と現生人類は、同じ社会を構成していたのかもしれません。

 

さきほど、現生人類とネアンデルタール人とが分岐した時期は、現生人類がアフリカを出る、6万年よりもはるか前であったという説を紹介しました。

 

一方で、マイヤーによる「生物学的種の概念(1942年)」によれば、

種とは、実際にあるいは潜在的に、相互交配する自然集団のグループ だと定義されています。

 

以上の2つを考えると、現生人類とネアンデルタールは、分岐しても、異なる種とはならなかったのかもしれません。

 あるいは、分岐することとは種が分かれることと定義されるなら、そういう意味では「分岐」しなかったのかもしれません。

 

実際、日本では、まだポピュラーではありませんが、世界の研究者の間では、これまで旧人とされてきたネアンデルタール人新人(現生人類=ホモサピエンス)に含まれるとする考え方もでてきています。

 

すなわち、人類の進化の図式は、以下のように考えられています。

 猿人 → 原人 → 新人

アウストラロピテクス) (ホモエレクトス)  (ネアンデルタール+現生人類※)

クロマニョン人を含む

 

さらに、過去ログ ”猿人は本当にいたのでしょうか? - 若い地球と進化論”で紹介したように、原人(ホモエレクトス)が、ネアンデルタールと変わらず、そして、猿人(アウストラロピテクス)が、単なる木登り猿だということがはっきりすれば、人類の進化の図式は、以下のように変わるかもしれません。

 

猿人=サル ☜ 関係ない ☞ 原人=新人

 

ネアンデルタール人研究では、権威ある古人類学者たちが同じ骨を調べて、互いに矛盾する解釈をすることは決して珍しくなく、これからも、さまざまな発見や報告がなされていくでしょう。